社長ブログ

業務中のドローン衝突を受けて

2ヶ月前のことですが、弊社従業員がフライト業務中、ドローンを樹木に衝突させる事案が発生いたしました。まずはクライアントの皆さまに多大なご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。

所定の自律飛行のフライトを上空で終えて手動操縦に切り替えて帰還する際、樹木に衝突して機体を損傷したまま枝木に引っかかった状態となりました。同機はその後、関係者により地面へとロープで落下させて大破しましたが、負傷者は出ませんでした。

操縦者口述によると、当日は晴れており、飛行時間帯において操縦者から見た衝突場所方向に太陽の光があり、眩しくて見づらい環境でした。このために奥行方向の空間認識に狂いが生じ、目測を誤ってしまったとのことです。本件については当時の日の向きを日の出・日の入り時間から算出していくと、ちょうど太陽光で眩しい方向に機体があったのは事実で間違いございません。

その他、次のフライトまでの間のインターバルが少ないため、少しでも早く着陸させようとの焦りもあったようです。健康面について、当日朝に提出された健康チェックレポートでは会社としては異常無しとの判断をしていましたが、口述によると実際には多少の疲れはあったとのことです。

意見聴取の結果として、原因は以下にまとめられます。

(1) 空間認識の喪失による目測の誤り
太陽光が眩しいことに対して、立ち位置を変えるもしくは手動操縦時の経路を変 えるなどの対策を行わなわず、そのまま操縦を継続させた。これにより、奥行方向 の目測を誤ってしまったことが樹木への衝突の原因と認められる。

(2) 焦りによるリスク対策の欠如
少しでも次フライトの準備時間を多く確保しようとつい焦り、本来であれば樹木 を回避した遠回りの経路を選択すべきところ、最短ルートでの着陸を選択したこ とが推定される。

(3) 疲労
自身は「大丈夫」と思っていても、実際には連日のフライト業務で疲労が蓄積していたことが推定される。

これを踏まえ、あらゆる再発防止策を講じることになりましたが、本日は(3)に対する再発防止策を公開いたします。

これまで当社では、他社に先駆けてフライト当日はフライト業務従事者全員から健康チェックレポートの提出を求めてまいりました。しかしながらこれは自己申告に依る部分が大きいため、目に見えない疲労についてまでは把握しきれない可能性があります。このため、以下2つの対策を講じることにいたしました。

<対策①>疲労管理基準の制定および運用導入
以下のとおり、疲労管理基準を定め、運用を開始いたしました。

疲労管理基準
基準項目定義基準時間
飛行勤務時間会社指示で行われる全ての業務(飛行、地上業務、訓練等)のために勤務を開始した時から最後の業務が終了するまでをいう。一連の勤務内に飛行を行わない場合は、飛行勤務時間には含まれない。12時間
連続飛行時間Before Takeoffフェーズから動力オフまでの時間のこと1.5時間
必要な休養時間勤務終了後から次の飛行勤務までに必要な休養時間のこと10時間

※突発的にやむを得ずのフライトの場合を除く。ただし突発的なフライトは1日までとする。

<対策②>PVT調査の導入
宇宙飛行士の健康管理で導入されている「精神運動覚醒テスト」(PVT:Psychomotor Vigilance Task)を定期的に運行従事者に実施ることにいたします。PVTとは、反応速度から疲労度を客観的に測定するもので、睡眠不足や生活リズムの乱れ、長時間作業などに伴う疲労に関連した注意力の変化を客観的に評価するために用いられている検査です。

今後も当社は、安全なドローン運航実現を目指して昼夜努力を重ねて参ります。今後ともどうぞ、お引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。

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